すきえんてぃあ氏が、例えば日本語の起源について自説を披露できるほどの専門的な知識を持っていると勘違いしている人が多いですが、残念ながら氏は知っている「ふり」をしているだけの素人です。
氏の古代中国語講座を一緒に見てみましょう。見た目だけだと、すごいと思うかもしれません。
(続く)
この動画の目玉といえる、古代中国語の発音記号(赤い文字の部分)は、ウィクショナリー(ウィキペディアの語学辞書バージョン)からコピペしただけです。
しかも、氏は自分がコピペした内容をまったく理解していません。その証拠が「者 *tˤaʔ」と「也 *lˤajʔ」です。
(続く)
古代中国語の発音を復元した最新の研究は、Baxter & Sagart 2014 (B&S) と Zhengzhang 2003 (ZS) があります。
「者」は B&S では *tAʔ で、ZS では *tjaːʔ です。
「也」は B&S では *lAjʔ で、ZS では *laːlʔ です。
氏は、他の漢字の古代中国語の発音は B&S のものを採用していますが、
(続く)
「者 *tAʔ」と「也 *lAjʔ」の B&S 復元発音に出てくる大文字の「A」の意味がわからなかったために、ZS を部分的に参照したのです。
普通は、ZS に「ː」の記号がある漢字は、B&S のほうには「ˤ」の記号があります。例えば、
「何」は B&S では *[ɡ]ˤaj で、ZS では *ɡaːl です。
なので、
(続く)
氏は ZS の「者 *tjaːʔ」「也 *laːlʔ」を見て、それを B&S 風にするために「aː」の部分を「ˤa」に替えて「者 *tˤaʔ」「也 *lˤajʔ」にすれば良いだろうと考えたのです。
しかし、それは氏が古代中国語に全く無知である証拠です。B&S の「tˤ」「lˤ」は、日本語ではタ行・ダ行になるからです。
(続く)
例えば、「都」は B&S *tˤa で、日本語では「と」になります。「者」は「しゃ」なので、「tˤ」ではなく「t」です。これは古代中国語を扱う人にとっては、基礎の中の基礎であり、これを間違えることはありえません。
タイプミスなら誰にでもありえます。しかし、これはタイプミスではなく、
(続く)
ウィクショナリーという、ウィキペディアの語学辞書バージョンの公開ウェブサイトに載っている情報で大文字の「A」になっている部分だけを間違えているのです。
これは、氏がコピペをした時に、大文字「A」の意味がわからなかったから他の情報から補おうとしてコケたとしか説明できません。
(続く)
氏の動画には他にも様々の問題があり、古代中国語について何らかの知識を持つ人が作ったとは思えないものです。最もわかりやすいのは、発音がめちゃくちゃであることです。例えば、「貓 *mˤraw」の *-r- をふるえ音で発音しているのは非常に怪しいです。
しかし、それだけではありません。
(続く)
氏の動画では、中国人を「秦人」と表現しているので、恐らく秦による天下統一後の時代の中国語をイメージしていると思われます。
にもかかわらず、氏の動画で採用している発音は、戦国時代のもので、*-oj > *-waj などの変化を反映していません。
(続く)
あと滑稽なのはこれです。ウィクショナリーの「盍 *m-[k]ˤap」から要らない部分をとって「kˤap」にアレンジしていますが、これもまた氏が古代中国語について何も理解していない証拠になります。
B&S の *m.kˤ- は *kˤ- ではなく *gˤ- になるからです。しかし、氏にそんな知識はありません。
(続く)
まとめるとこんな感じです。
① すきえんてぃあ氏の古代中国語講座は、ウィクショナリーから漢字の復元発音をコピペしているだけ
② コピペした発音を一部アレンジしているが、ちゃんとした知識がない状態でやっているので大失敗している
皆様はこんなデタラメな動画に騙されないようにしましょう。